MandL LIFE

夫婦のライフログから家族の記録へ

凍結した受精卵(凍結胚)の更新と破棄について思うこと

凍結胚の破棄と更新

凍結した受精卵(凍結胚)の更新期限をもう少しで迎えるにあたって、凍結胚のこれからについて考えることが多くなりました。

特に、こどもが生まれたその日から、凍結胚に対する僕の見方がガラッと変わりましたので、まとまりのない文章となりますが、その想いを吐露してみようと思います。

体外受精で凍結胚が生まれるまで

僕たち夫婦は妊活、人工授精から一気に顕微授精へステップアップしてこどもを授かり、先日無事に出産を迎えました。(切迫早産やMFICUへの転院などバタバタもしましたが結果無事に生まれてよかった)

顕微受精に至った原因は僕の男性不妊(質悪し、量少なし)だったのですが、体外受精は男性側に原因があったとしても女性に負担をかけてしまうことは知っておいたほうがいいと思います。

その体外受精で、凍結胚が生まれるまでの過程はざっとこんな感じです。

  1. 排卵誘発剤を一定期間、決められた日時に投薬(注射/通院や飲薬)し続ける
    →(働く女性にとってスケジュール調整がストレスになりやすいです。
  2. 排卵日に全身麻酔(もしくは部分麻酔)をかけて採卵する
  3. 事前に採精したものを体外受精(ふりかけ)もしくは顕微受精させる
    →受精しない場合もあるので、実際の採卵数よりも受精卵は少なくなります。
  4. 受精卵(胚)を胚移植できるまで培養する
    →正常に育ない受精卵も生まれるため実際の受精卵よりも少なくなります。
    →胚ごとにグレード(質の評価)が付けられます。
  5. 育った胚盤胞を凍結保存する
  6. グレードの高い胚盤胞を子宮に移植する
  7. 着床確認

受精卵にはグレードがある

体外受精(顕微受精)で生まれた胚盤胞は、胚の形態によって54通りにグレード分けされます。

[胚盤胞の大きさを1〜6の6段階]

×[内部細胞塊(胎児になる細胞)の大きさをA〜Cの3段階]

×[外細胞塊(胎盤になる細胞)の均一さをA〜Cの3段階]

例えば[4BA]や[5AB]や[4CC]のように表記され、胚盤胞移植の際は着床確率が高いであろうグレードの高い胚盤胞から移植することになります。

体外受精の内容は病院や対象者によってアプローチが異なりますので、あくまでも僕達もケースになります。

 

凍結胚に対する想いの変化

冒頭で、こどもが生まれてから凍結胚に対する見方が変わったと書いたのですが、具体的には次のような想いの変化が生じています。

 

【こどもが生まれる以前】

凍結胚は僕たちが子供を授かるために必要な種でした。

グレードで良い悪いの評価をし、命という認識よりも医療行為の一環に近い認識だったと思います。

 

【こどもが生まれた以後】

こどもが生まれた今となっては、凍結胚は生まれてくれたこどもの大切な兄弟姉妹であるということです。

もしかしたら、本来末っ子だったかもしれないはずが、たまたま最初に生まれた可能性もあるわけで。

そう思うと、グレードなんて関係なく、全て等しく大切なこどもに見えて仕方がありません。

もし生まれてきたら、どんな顔、声をしているんだろう。性別はどっちなんだろう。どんな子に育つんだろうと想像してしまう自分がいます。

「こどもは3人欲しかったから、残りはもういいです。」なんて割り切って考えはできるはずもありません。

凍結胚のことで悩むとは思っていなかった

「そんなの体外受精をした時点で覚悟していたことでしょ?」

と言われてしまえばそれまでなんですが、正直なところ、当時はそんこなこと1mmも考えていませんでした。

なんなら、(病院によって違うかもしれれませんが)、診察室でそこに説明を割かれる時間もほとんどなかったと思います。

たしかに妊娠して出産することが目的ではあったので、本来の目的からすれば深く考える必要はないのかもしれません。

ですが、僕のように考えてしまう人も少なくない(特に女性ならなおさら)と思うので、どういう心持ちでいるべきかといった"大人の話"は事前に聞いておきたかったなぁ、、、と、今は感じています。

 

いずれ迫られる凍結胚(余剰胚)の破棄

僕にとって、今や凍結胚はこどもです。目の前にいるこどもの兄弟姉妹です。

ですが、凍結胚は延々と保管しておくことはできず、以下のいずれかに該当した時に破棄されることになります。(余剰胚ともいうのですが、余剰という書き方には抵抗がありますね、、、)

  • 夫婦関係の解消やどちらかの死亡等があった場合
  • 生殖年齢を超えた場合
  • 自分たちの意思で決めた場合
  • 更新手続きをしなかった場合

僕たちは思いのほか採卵できたことからたくさんの凍結胚が保存されているわけですが、全員を産んであげることができません。現実的な話で言えば、年齢的な問題、子供にかけるお金、毎年の高い更新料などがその理由です。

もちろん自然妊娠でも着床から出産までの確率も高くないことは承知していますが、すでに受精卵として存在を認知している以上、いずれ訪れるであろうその日に対して、気持ちの整理をなかなか付けられずにいます。

科学の力を借りてたくさんの凍結胚を生み出しておきながら、めちゃくちゃ勝手を言ってることは十分わかっているつもりではあるのですが、、、。

 

僕たちが凍結胚にできることとは

最近、妻も同じようなことを考える時間があるみたいで、「なにかしてあげられることはないのかな」といった会話をすることがあり、次のような案がでました。

2人目、3人目も胚盤胞移植

1つ目は、いずれ2人目、3人目を授かりたいという意思はありますので、いずれ再び妊活に取り組む予定があるのですが、自然妊娠のチャレンジはせず、胚盤胞移植で出産することです。

僕は男性不妊ですが無精子症ではないので、値が改善されていれば自然妊娠でチャレンジすることが可能です。

ですが、すでにせっかく生まれた命があるのだから、できるだけその子達を優先してあげたいというのが妻の意見でした。僕も納得&賛成です。

それぞれに名前をつけて供養する

妊活に取り組んだとして着床できなかったり、流産してしまう可能性も十分ありますし、最終的に凍結胚を破棄しなければならない日が必ず訪れることも分かっています。

なので、僕からは今ある凍結胚それぞれに名前を付けて、残念ながら生んであげることができなかった時は供養してあげるのはどうかという意見を出しました。妻も概ね同意してくれました。

こどもを200%の愛情で育て切る

無事に生まれてくれたこどもは、今も冷凍保存されているこどもたちの兄弟姉妹でもあり、分身のような存在です。

だからこそ、僕と妻の愛情をたっぷり注ぎ込んで育て切ること、これも彼ら(彼女ら)のためにできることなのかなと思います。

研究のために提供は、、、

破棄される凍結胚は研究目的として提供できる場合もあるらしいのですが、今のところ僕も妻も反対で意見は一致しました。

研究で助かる命があることも分かるのですが、、、うーん、、、言葉にするのが非常に難しいのですが、気持ち的に抵抗があります。

ちょっと読みにくいのですが、「余剰凍結受精卵の医療への活用は、非倫理的か」という内容も興味深く読ませていただきました。

https://cellbank.nibiohn.go.jp/legacy/information/ethics/refhoshino/hoshino0070.htm

Compassionate Transferという方法もあるらしい

ちなみに、あまり日本ではメジャーではないようですが、凍結胚を破棄せず、妊娠しない時期や妊娠しない場所に胚盤胞を移植して区切りをつける「Compassionate Transfer」という方法もあるようです。

yokohama-hart.jp

ameblo.jp

 

育児、妊活、凍結胚

とはいえ、僕以上に、今後この悩みに頭を抱えるのは妻だと思います。ツーオペで育児に取り組んではいるものの、どんなに負担を軽減しようとも授乳(母乳)の代わりはできないわけで、それによって慢性的な睡眠不足を始めとした様々なことに悩んでいるのは妻なわけです。

その中で、職場に復帰し、どこかのタイミングで顕微受精に取り組み、育児をしながら、顕微受精の結果に一喜一憂し、将来訪れる凍結胚破棄について考えるなんて、とてもじゃないけど抱え切れないほどの負担になってしまう決まっています。

 

そういうことを考えると、妻の話を聞き、一緒に悩み、そして最終的に"僕"が決断することで、後悔や無念の気持ちが生まれた時に、その悲しみや怒りの矛先を僕に向けることで多少は負担が軽くなるかもしれない。思ったりします。

結局は男性不妊によって今の状況を招いているわけなので、僕ができる責任の取り方を考え、実行していくしかないのかもしれません。

 

皆さんはどうやって気持ちに区切りをつけましたか??もし共有してくださる方がいれば教えてほしいです。

 

お題「捨てられないもの」