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「ルワンダ中央銀行総裁日記」の読書感想文

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

(恐れ多くも若輩にして浅学な僕の読書感想文シリーズ)

前回は「代表的日本人」でしたが、今回は「ルワンダ中央銀行総裁日記」の読書感想文をまとめようと思います。

既に併読していた書籍があるにも関わらず、先に本書を読み終えたのは、前から気になっていたというのもありますが、やはり「代表的日本人」に影響を受けたことが大きかったのかもしれません。

結論から言えば、著者である服部正也氏は模範とすべき実務家像であり、間違いなく「代表的日本人」であろうと思います。

現場人であること

途上国の発展を阻む最大の障害は人の問題であるが、その発展の最大の要素もまた人なのである。

日本銀行からルワンダ中央銀行の総裁に就任するという文章だけでは伝わらないのですが、読み終わって最も印象的だったのが服部氏の現場人としての凄さです。

ただ理論先行ではなく、マクロ経済学の理論はベースにありつつも、ミクロ経済学の実践的見地及び実際の商人からのヒアリングしていたことが書かれており、そこには一般的にイメージされる総裁とは異なる服部総裁の実績がまとまっており、ノンフィクション小説としての面白さもあります。

特に人間の良い部分を信じつつも、性悪説と言いますか、客観的に個々人の人間性についてストレートに評価していることも気持ちの良い内容でした。

教訓となる言葉

「(大学卒業後に兵役の代わりに技術援助としてルワンダにきた青年たち、特に真面目な者、頭のよい者を指して)彼らは実社会の経験がないうえに、やや理想主義的なところがあり、理論の適用に急で現実を見る眼が甘く、以下省略〜

決して自分のことを頭のよい人間だとは思いませんが、この文章を読んだ時に「ドキっ」としました。

むしろ今の日本や先進国で生まれ育ち、インターネットの中で育った現代人で、当てはまらない人の方が少数なのかもしれません。

服部氏はこのような人材を含めた「『技術』援助員の大多数はなんの役にも立っておらず、有害ですらあった。」と記載してさえいます。

私も時には論理を語ったり、批評したり、心無い行動をしてしまうこともあるのですが、それらのなんの役にも立っていない言動は慎み、役に立つ言動をするために視点や視座を変えるべきがあるのだと痛感しました。

偏見と差別と優越感が発展を阻害する

本書ではルワンダ宗主国がベルギーだったこともあり、一部の協力者を除き白人及びベルギー人の優越感を辛辣に批判しています。

能力があるのではなく、対立軸/比較対象を作ることで優越性を生み出す者が能力あるものとして幅をきかせる。このような人は意識的か無意識的か関わらず、学歴社会の日本にもたくさん存在するように思います。

いくらかバイアスはかかっているかもしれませんが、服部氏の「ルワンダ人によるルワンダの経済再建」という目的/公益のために働く姿勢や考え方から、旧来の日本人らしさを見た気がします。

実務家であり実業家であり続けること

私として一番よかったのは、毎日なにかを学び、学んだことを実施に移す生活、反射的な行動は許されず、たれも相談する相手もなく、一人だけで考え、行動する生活だったような気がする。

本書の初版が1972年なので、服部氏がルワンダ中央銀行総裁から日本銀行に復帰してから1年、54歳の時に上の文章を執筆していることを思うと、敬服する思いです。

実業家は実業家でなければ本当の想いや気持ち、考えを理解することはできませんが、実務家として毎日仕事をしている私自身としては、40代、50代になっても服部氏のように「毎日なにかを学び、学んだことを実施に移す生活」ができるよう、現実を見て愚直に頑張っていこうと思わさました。

繰り返し読み返すべき指南書

私にとって本書は「指南書」として何度も読み返すことになりそうです。服部正也著の書籍が少ないことが残念でなりません。私自身の仕事人の理想像として、定期的に服部氏の話を聞きにいきたいと思います。

次の読書感想文

「代表的日本人」の内村鑑三著の「後世への最大遺物 デンマルク国の話」を今読んでいますが、他に併読中の本もあるので読み終わったらまた読書感想文としてまとめようと思います。