MandL LIFE

夫婦のライフログから家族の記録へ

「武士道の逆襲」の読書感想文

武士道の逆襲 (講談社現代新書)

(恐れ多くも若輩にして浅学な僕の読書感想文シリーズ)

三島由紀夫の「葉隠入門」、新渡戸稲造の「武士道」を読み、果たして武士道とは日本人的な道徳論なのか、それとも武士たらんとする心持ちなのか、もっと理解したい思うようになりました。

そこで山本常朝(やまもとつねとも)の「葉隠集」を読もうとしたところ、友人から葉隠の訳注者でもある菅野覚明(かんのかくみょう)先生の「武士道の逆襲」からから読むのが良いと推薦されて読んでみました。

 

武士道への誤解

武士道は「一つの階級的思想」であって、外国を意識して生まれた「国民的思想」ではない。したがって、武士道を、「国民的思想の表徴」であり、対外的比較のニュアンスを含む「大和魂(=Soul of Japan)」と単純に同一視することはできない。

 

以前から「侍ジャパン」や「侍ブルー」のように、「侍魂(≒武士道)」を日本人のアイデンティティーとして紐付けた呼称に違和感を感じていたのですが、本書で"武士道の皮をかぶったキリスト教である新渡戸稲造内村鑑三の『明治武士道』"の痛烈な批判を読んで少しだけ違和感の謎が解けた気がします。

 

それによって武士道を理解するには到底至っておりませんが、少なくとも本来の武士道は"高貴な道徳観、国民的思想である綺麗事"ではないことは理解できました。

 

「只今がその時、その時が只今」

武士とそれ以外の人を分ける基本線は「常在戦場という観念」「只今がその時、その時が只今」という精神にあると言います。

 

ここで誤解をしないように補足すると、「一挙手一投足のすべてに己れの存亡がかかっている覚悟」がある人間が武士道を持っているのではなく、武士(兵、つわもの)の道だからこそ「一挙手一投足のすべてに己れの存亡がかかっている覚悟」が必要であるという点です。

 

つまり、いくら現代人が武士道にならった立ち振舞や言動をしたところで、武士を道を究めんと、武士として生き、武士として死なんとすることでない限り、武士道を完全に理解することは難しいのかもしれません。

 

武士道と云は、死ぬ事と見付たり

本書を読んで特に興味深かったのが、忠臣蔵として知られている赤穂浪士を武士失格であると切り捨てていることです。

 

  • かたきを討つまでに相手が死んだらどうだったか
  • 敵を撃った後にすぐ腹を切らなかったのも汚点である

 

「武士道と云は、死ぬ事と見付たり」とは"売られた喧嘩に対し、そのきっかけを逃さずに、死地に突入すること"であり、そのためには日頃の覚悟が欠かせないものでありながら、赤穂浪士は「上方風の打上たる(お上品な理屈っぽい)武道」であるとしています。

 

現代の生活や仕事でも"先に理屈を並べて後悔する"こともあると思いますし、武士のように刀を抜くわけではありませんが、そのきっかけを逃さずに突入する覚悟は私にも必要なものだと感じます。

 

もし現代で武士道を学ぶなら

「もし現代で武士道を行くとしたら」を考えてみたときに思いついたのは「会社組織」でした。

武士は刀の代わりにパソコンを手にし、主君(法人またはオーナー)と市場競争で戦っているイメージです。

 

ですが、おそらく以前は主君を選んだり、士農工商の階級の中で食うための職を選ぶ自由がなかった一方で、現在は選択肢の多さも選ぶ自由もあり、会社の「御用に立つ」思想は限りなく薄まっているのだと思います。

 

私も「奉仕をして俸給をいただく」という考えを実践しているつもりでも、そもそも戦闘者としての思想が弱いこと、解雇(武士道の時代ならば切腹)を覚悟して社長に諫言したこともありません。

 

時代背景や社会制度のせいにすればそこまでですが、現代で武士道を行くには相当な覚悟があっても難しいと感じてしまいます。

 

山本常朝は、武士として、家来としてこの自分があることの根拠や意味は、「御先祖様方」の「血みどろ」の原体験の内にすべて見いだせるものと考えている。この太平の世にあっても、変わらぬ指針たりうるのは、「御先祖様方」の「御苦労・御慈悲」の中身を措いてないのだと考える。

 

本書で最も響いた一節です。

 

自分があることの根拠や意味を振り返ることは非常に少なかったので、武士になることはできなくても「御先祖様方」の「血みどろ」に原体験の内に全て見出そうとすることで0.1%くらいの武士道は行けるのではないかと、、、。

 

次の読書感想文

「武士道の逆襲」の読書感想文は、言葉にするのがとても難しく、1日中時間をかけて吐き出せたのがこのブログで精一杯でした。

ただ新渡戸稲造の「武士道」と合わせて読むには、非常に有意義な書籍だと思います。

今はルースベネディクトの「菊と刀」を読み始めたので、実際にアメリカからはどう見えているのか対比しながら読んで読書感想文としてアウトプットできればと思います。

葉隠」も順に読んでいかなくては、、、💪

武士道の逆襲 (講談社現代新書)

武士道の逆襲 (講談社現代新書)

  • 作者:菅野 覚明
  • 発売日: 2004/10/19
  • メディア: 新書